人の踊る時は踊れ - しふみんの日記 に引き続き、本オブジイヤー2023(僕が読んだタイミング起点)の大賞候補である「限りある時間の使い方」だ。
Amazon.co.jp: 限りある時間の使い方 eBook : オリバー・バークマン, 高橋璃子: 本
「第4章 可能性を狭めると、自由になれる」の「選択肢は少ないほうがいい」が(も)良かった。これはタイトルに書いてある通り妥協の話である。
曰く、恋人選びは妥協するしかない。
以下、引用は全て「限りある時間の使い方」から。
「もっといい人がいるはずだ」と密かに思いながら中途半端な相手と交際を始めるのは、明らかに妥協だと誰もが認めるだろう。でも、決まった恋人をつくらないこと──たとえば理想の相手に出会うためにマッチングアプリで10年間相手を探しつづけること──も、やはり一種の妥協である。つまり、オンラインでの出会いを求めることに時間を費やし、いつまでも先に進めないという残念な状況に甘んじているわけだ。
そして、恋人選びに限らず人生も必ず妥協するしかないと説いている。
高みを目指して努力することも一種の妥協だと言っている。痺れるね。
さらにグッディンに言わせれば、妥協する生き方と、最大限に努力する生き方とを対比させるのは、そもそもまちがっている。最大限に努力するためには、どこかで手を打つ必要があるからだ。
「高みをめざして努力するためには、努力の対象となる何かに、比較的永続的な方法で腰を据えなければならない」と彼は言う。つまり超一流の弁護士や芸術家になるためには、まず他の可能性をすべて諦めて、法律や芸術を学ぶことに打ち込まなくてはならない。やりたいことを全部追い求めていたら、どれも中途半端に終わってしまう。だから、ほかにもっといいキャリアがあるかもしれないという誘惑を振りきって、法律や芸術で妥協するのだ。
僕はこれを読んで、人間は高すぎる理想や期待値を持つからいけないと感じた。
アムロ・レイも「革命はいつもインテリが始めるが、夢みたいな目標をもってやるからいつも過激なことしかやらない！」「しかし革命の後では、気高い革命の心だって官僚主義と大衆に飲み込まれていくから、インテリはそれを嫌って世間からも政治からも身を引いて世捨て人になる」と言っている。
恋人に限らずだが、人間は他人に失望することがある。
でも、それは当たり前なんだ。だって他人は他人なのだからだ。
本書にも書いてあるが、人間関係の本当の問題は「相手がただの人間である」ということだ。相手に特別な欠陥があるとか自分と特別に相性が悪いということではない。相手は人間なので必然的に不完全で、自分の理想ではないことに失望してしまうんだ。
想像上の未来はあらゆる理想を叶えることができる。僕もYouTuberとして一発当てる未来を想像することができる。一発当てたい。
同じように、想像上の他人は現実と違って自分が理想とするあらゆる特徴を兼ね備えさすことができる。だから、他人に対して自分の理想を重ねてしまうが、でも現実は理想ではない。自分の理想と現実の不完全な人間を比較して失望してしまうんだ。
でも、それはそうだろう。だって人間は不完全な存在なのだから。全てが自分の理想の他人なんてこの世界にいないんだ。過去から未来に渡ってな。現実的な時間で手に入る全てが理想の個体値のポケモンはいないんだ。
だから、「この関係を続けよう」と覚悟を決めなければ、いつまで経っても深い関係を築くことはできない。
何かを選択するについても同じことが言える。
何かを適当に選ぶのはよくない。僕は少なくとも意志と意図を持って何事も選択する。
(余談だが、昔関わった企業のバリューの1つが「意思と意図をもって判断する」なのはよかった)
が、理想を追求しすぎるのもよくない。それではいつまでたっても選ぶことができない。
オタクはすぐにゲームで例えるが、ゲームのTASもその時点で判明している理想のプレイを再現しているだけだ。それはこの世界のあらゆる時間軸にとっての完全な理想ではない。ある時点での「これが理想」という選択をしているだけだ。
僕は人間はこれを人生でやるべきだと思っている。今時点の理想という、いい妥協を選択する必要があるんだ。
つまり、結局は全ての選択は妥協なんだ。
全ての選択は妥協なので、それでは妥協してある選択をしたとしよう。
しかし、選択をした瞬間に決定論的に結果が全て決定されるわけではない。選択したその直後からその選択をより良いものにしていくことはできる。
多数の選択肢から1つを選び無限に広がっていた可能性を封印したんだ。もう取れるオプションといつそのオプションを行使するかに悩まなくて済む。じゃあ、あとはその選択にコミットするだけだ。集中してエネルギーを投じろ。
自分の選択にコミットし、選んだ道を正解にしていくぞo(^-^)o
とはいえだ。最後にディスクレーマー的に書いておくと、マジでどうしようもない選択を引いてしまうことはある。人生は長いから。どうしようもないと思ったら撤退しよう。それは逃げではない。前に進んでいる。
